2014年 11月 11日
心を受けとめる空間 |
心を受け止めてくれる空間が、
癒し空間の特徴の一つではないでしょうか。
メッセージや主張がなんらかの形で、心に届いてくる空間が
今は特に多い時代だと思う。それに引き替え、人の気持ちを
受け止めてくれる空間が現代は少なくなっていると感じるの
です。
図式にして、→が気持ちの向くベクトルとすると
気持ちの向き 空間の特徴
自分のこころ→空間 癒しの空間
空間→自分のこころ メッセージ、主張の空間
となります。
実際には、この両方の性質が一つの空間に備わっていますが、
→の向きのどちらが優位かで判断できます。自分に向かって
くるような刺激的なものは主張の空間ということですし、ス
ーッと気持ちがとけ込むようなら癒しの特徴といえます。
その部屋に入ったら、空間が何ともいえず心地よくて、時間
を忘れてゆったりするように感じた経験はないでしょうか。
それが、心を受け止めてくれる癒しの空間だと思うのです。
ますます息苦しくなっている日本で、岡山もそうですが、現
代人は癒されたいという心の叫びを抱えて生きている人がほ
とんどだと思います。このニーズに応えていく空間は、住宅
や医療福祉施設に限らず、オフィスや商業施設にも必要と考
えます。
何事も経済的尺度で判断されることが多い時代です。それも
大事な判断材料でしょう。だからこそ、空間に対する心のベ
クトルの向きが重要ではないでしょうか。
お客様のために花を生ける。庭を掃く。こうした所作は、お
客様の心を受け止めてこそ一層活きてくるものです。それは、
建築空間も同じだと思うのです。
日本の伝統的なものづくりの姿勢に、「作為を消す」という
のがあります。それは、「自然に感じるように作りなさい」
ということですが、心を受け止める空間づくりはそれに近い
ように思います。
翻って、こうしたことを文章にしたくなるのも、僕の体質が
そうなんだと実感するのです。
「佐野さんの住宅を体験すると、いつも建ててくれてありがと
うと自然に思えるんです。」
と感想を言ってくださる方がいることを以前紹介しました。
上に書いてきたように、こうした僕の考え方が設計した住宅の
空間に乗り移るものが何かあって、それをたぶん彼女は感じて
くれていたのだろうと、今はスッキリ思えるのです。
by maruyama834
| 2014-11-11 08:47
| 癒しの空間