瀬戸内建築の美意識 |
昨年の秋に丹下健三展のレポートを建築専門誌に載せていたら、知人が感想メッセージを寄せてくれた。
以下、それを紹介すると、
佐野さんの文章は穏やかな海に浮かぶ島々のようなリズムだと感じました、、と
コラム読後に思いました。「場所とともにある美しい建築」をつくる、あるいは
「場所をつくる」という姿勢を育むのは瀬戸内の美しい風景だとのご指摘、丹下
の都市計画的手法と瀬戸内の風景を結びつけるスケールの大きな想像力には魅了
されます。、、丹下についてあまり考えたことがなかったので、今回よいきっか けをいただきました。
この感想を書いてくれたのは、京都で活動をしている建築家です。
ちなみに私のレポートのテーマは,愛媛県の今治出身で香川県など四国の仕事を通して世界的になっていった丹下作品と瀬戸内の関わりを探ることだった。同じ瀬戸内で設計をやってる身としては、そこに興味を惹かれてのことであった。
こうやって感想を読むと、こちらの思いが彼に通じた嬉しさとともに、やっぱり瀬戸内には何かがあると意を強くするのです。
それは何かというと、レポートに書いたように、「場所とともにある美しさ」ということです。
普段,住んでいるから当り前のように見かける周りの瀬戸内の景色は、実はとっても素晴らしいのです。だから、ここに何かを建てようとしたら、その美しさを建築に取りこんだり、この場所とともにある美しい建築を設計したくなるのは、考えてみたら当り前のことです。僕自身にも知らないうちに身についている、そんな設計作法なのだと思う。
建築の自立した美しさももちろんありますが、建築にこうした特徴を持たせてくれるのが,私たちのこの瀬戸内の風景の大きな特徴ではないでしょうか。ひと言でいうと、なんか景色や光が感じよくて建築を馴染ませたくなるのです。
彼の感想は丹下健三展で感じたことと相まって、僕の瀬戸内に対する感覚をまた一つ強くさせてくれた気がする。次の作品に生かしたいものです。